ルーシッド・ボディとは
台本を読み込み、キャラクター分析をし、役の心情は自分の中でできているのにそれが演出家やシーンパートナー、観客に伝わっていないと感じたことはありませんか。
どんな役を演じてもいつも同じに見えると言われたことはありませんか。あるいは、いつも同じような役ばかりにキャスティングされていませんか。
上辺だけの小芝居やテクニックに頼らず、自分の心も観客の心も動かすような演技がしたくありませんか。
アレクサンダーテクニックやヨガ、ダンス、太極拳などのムーブメントのクラスを受講し、「自分の身体の使い方や癖」「ニュートラルな状態」を知ることができたのに、それをどう演技に役立てればいいかがわからずにいませんか。
これらの問いに一つでも「はい」と答えたのであれば、ルーシッド・ボディはきっとあなたの役に立ちます。
ルーシッド・ボディは、モダンダンサーだったフェイ・シンプソン(Fay Simpson)によって考案された俳優のための実用的な演技トレーニング法です。心と身体は一体であるという考えに基づき、俳優が己を理解し、人間観察の直感を養い、役作りに応用することで演技の幅を広げられるように構成されたカリキュラムです。
ルーシッド・ボディが目指すのは、頭で考えた上辺だけの「型にはまった演技」ではなく、心と身体の真実に耳を傾けてそれを表現する術を学ぶこと、心と身体をつなぐことです。そのためにまずはヨガ等を基にした準備運動で、俳優自身が持つ「インストルメント(音楽家にとっての楽器のように、俳優にとってのインストルメントは己の身体です)」を知る作業から始めます。ここでの準備運動は「骨や筋肉で構成される身体」のストレッチに留まらず、「感情・記憶・エネルギーで構成される身体」のエクササイズでもあります。
ルーシッド・ボディを特徴づけるのは、7つのエネルギーセンター(チャクラ)に注目した人間の行動パターンの観察とキャラクター分析です。チャクラの状態が人間の行動・感情・性格等に及ぼす影響について学び、即興やエクササイズを通してそれを体感します。
頭ではなく身体が出発点であることから演劇学校ではムーブメントのクラスとされることが多いのですが、心理学者カール・ユングの提唱したペルソナやシャドウ、キャロリン・メイスのアーキタイプの概念を基にした人間理解、マイケル・チェーコフのサイコロジカル・ジェスチャーを取り入れたエクササイズ等を通し、よりリアルで人間らしい複雑さを備えた役作りを学びます。
また、シーンスタディで必要となる「全身で聞く力」を養うためのエクササイズは、しばしば受講した俳優から「マイズナーテクニックの身体版」とも評されます。
こうしてまずは俳優自身がもつ「インストルメント」の癖や、演技に使える部分、まだ使いこなせていない部分等への気づきを高めます。その後、その気づきを役作りに応用していくことで演技の幅を広げられるように構成されたカリキュラムです。
演劇の本場NYで生まれたルーシッド・ボディは、過去20年間で演劇の名門校であるイェール大学大学院、ニューヨーク大学大学院の他、マイケルハワードスタジオ、ステラアドラースタジオ等、数多くの名門演劇プログラムで採用されてきました。近年ではNY、ロンドン、LAの他、ブラジル、ベルリン、メキシコ、ローマ、フランス、中国など世界各地で認定講師によるワークショップが行われています。